おべんきょうノート

自分用です。

安政5年12月16日 松陰⇆栄太郎

表面 松陰筆

家爺疫症危篤、苦心いたし候 小生儀も看病中入牢見合せの事嘆き出で候處、御詮議に相成るべき趣、先づ御喜び下さるべく候

父・百合之助が伝染病により危篤、色々と悩み苦労している。僕の件も看病中は入牢が差し控えとなっていて悲しみで溜息が出ていた所、ご詮議になる様子。まずはお喜びくださるように。

 

是れに付き多端の話之れあり候へども、今日の筆盡し難く候 天下國家の事いまだ手段之れあり候に付き、却つて苦心致さず候 足下にはいかがや 餅つき候ゆゑ贈り候 御一嚙然るべくぞんじ候 多事閣筆
     十六日      松陰
  無逸足下

この事について沢山の話があるのだけど、今日の手紙では書き尽くせない。天下とお国の事はまだ方法はあるので却って思い悩んだりしない。君はどんなものだろうか。餅をついたので贈ります。お一噛みいただきたく思います。多事閣筆

     十六日      松陰
  無逸足下


(外封)
 榮太郎殿        杉

 

 

裏面 栄太郎筆

  引返御免
杉旦那様御病氣の段迫々承り御苦心伏察し奉り候 何卒早々御全快候様祈る所に候 扨て御餅御恵贈仰せ付けられ誠に有難く、今朝より搗音眠を驚かし候處入手、中夏に雲霓を望む如し、御賢察祈り奉り候

(裏面に書いたので)引返しにて失礼します。

杉家旦那様がご病気との事をお聞きしご苦労お察し致します。どうか早く回復されるよう願っております。さてお餅お贈りいただき本当に有難く、今朝(餅を)つく音で眠りから覚めたのですが手に入り、まるで夏の半ば(日照り)に雲と虹(雨の前兆)を待ち焦がれたかのようです。お察ししていただきたく思います。


扨て國家の事今以て御苦心察し入り奉り候 且つ御手段之れある由驚喜仕り候 尚ほ又此の間上方より飛脚歸り申し候由、御左右決して御聞き遊ばさるべく存じ奉り候 先づは閣筆

さて国家の事、今になってもなおご苦労されていると思います。一方でご方法があるとの事に喜びと共に驚いています。尚、またこの間上方から飛脚が帰ってきたらしく、あれやこれやの状況を必ずお聞きなさるのが良いと思います。先ずは閣筆