おべんきょうノート

自分用です。

安政6年5月東行前 松陰→杉蔵

吉田松陰全集コマ219

松陰 野山獄
杉蔵 岩倉獄

久保・天野來る 天野は吾が見る所恐らくは違はず 是れは高杉來歸を待ちて決すべし 久保は眞に吾れを知るもの、今更に申すに及ばず 爰に一落涙したることあり 

久保君、天野君が来た。天野君は私が見るところによると恐らく(意見は)違わない。彼の事は高杉君が帰って来るのを待ってから決めるつもりだ。久保君は本当に私(の心)知る者だから今更何かを伝える必要はないが、ここに涙がひとつ落ちた出来事があった。

 

久保「吾れ塾に往くを欲せざるに非ず 實に暇なし 只だ一の彌二時々來て先生・杉蔵の事を通ずるのみ、彌二眞に惧れざるの奇人なり云々」 

久保君は「私は塾に行きたくない訳ではありません、実に時間(の隙間)がないのです。唯一ヤジが時々来て先生や杉蔵の事を報告するのみです。ヤジは実に惧れのない(安心出来る、危惧しなくてもよい)優れた人物だ」などと言った。

 

嗚呼、清太固に人を知る、思父も人を知るといふべし 塾中喋々の人尠からず、却つて一黙然の清太を敬す 是れ等の隻眼、思父亦吾が輩の人なり

ああ、清太は元より私の人となりを知っている。(その清太が)ヤジも私を知るというのだ。塾内は調子が良く口数が多い者が少なくない中、(それが当たり前であるかのように)黙した態度の清太に敬意を表す。(清太の持つ)これらの優れた見識、そしてヤジもまた我々の同志である。

 

無逸は足下是れを度外に措いて呉れよ 吾れ大いに敬服することあり 唯だ吾れ獨り之を知れば足れり

無逸の事は、君は気に留めずにおいてくれたまえ。私は(無逸に対して)大いに尊敬している事情がある。ただ私一人が知っていれば充分だ。

 

吾れ遂に不孝の子なり 此の行少しも父母を思はず 只だ吾が諸妹云はく「阿兄を哀しむの心を以て父母に事へんのみ」と 此の言吾れ自ら喜ぶなり

私はとうとう親不孝者となった。少しも父母を思わない行為だった。唯、私の妹達は「兄さんの処遇に胸を痛めながら父母に奉仕するばかりです」と。この言葉に私はとても嬉しく思っている。

 

足下若し吾れを惜しまば、久保・久坂と三人赤心相示せ 三人和協せば事憂ふるに足らざるなり 高杉・佐世其の外も追々歸來すべし

君がもし私を心残りに思っているならば、久保君・久坂君と三人で嘘偽りない真心を示せ。三人で力を合わせれば何も憂う事はない。高杉君・佐世君、その他も追々帰ってくるだろう。

 

同志一塊とならば自ら强し 久保・久坂已に此の意を了せり 

情緒亂出、筆盡すべからざるなり

同志一丸となれば自然と勢力も増す。久保君と久坂君は既にこの考えを了解した。

感情入り乱れ、書き尽くせる事はない。