おべんきょうノート

自分用です。

安政6年4月1日 高杉→久坂

久坂に萩下の近況を問うも返事が来ず、これが三通目

 

二白、僕も愚父様子相考候ニ、来春カ来秋ニハ必帰萩サセ、松下様子大憂イ居候、松下先生ニハ書状可差上ト相考、度々認候得共、ウソニナリ候事カ多ク御座候故、ヤメ申候
追伸、僕も父の状況を考えると、来年の春か秋には必ず帰萩させなさる。松下(村塾)の状況、とても心配しています。松陰先生には手紙を差し上げるべきと考え幾度か認めてみましたが、嘘になることが多くなりますので、やめました。
 
別後御起居如何、且御病気如何、御様子承度御座候、僕儀も区々食粟候間、乍憚御休意奉願候、
別れた後、そちらでの生活はいかがですか。病気の具合やご様子をお聞きしたいです。僕自身も僅かに禄を食んでおりますので、ご安心いただくようお願い申し上げます。


陳ハ御地之様子一ツも不知レ申、猶又来翰無御座候、少々不平之至御座候、僕ハ貴兄在江戸之節ト雖トモ、格別ツイショウモ不申、御賞挙モ余り不申上候得共、心中ニハ僕ハトテモ及ハヌ、頼之ムベキ人ト思ヒ、兄弟の盟ヲモ致度ト、シヨセン思ヒ居候得共、是迄遂ニ口外不仕居候、
僕はそちら(萩)の様子がひとつも知れません。なおまた(貴方からの)手紙も来ず、少々不満の至りでございます。僕は貴方が江戸にいる時といえども特におべっかも言わず、誉めそやかすような事もあまり言いませんでしたが、心の中では僕ではとても及ばない、頼れる人物だと思い、つまりは兄弟の盟約をも結びたいと思っていましたが、今日まで遂に口に出せずにいました。

 

僕も一人之兄弟も無御座、常ニ心細ク思ヒ居候クライニ御座候、夫故此節も読書ナトニ倦ミ候節、天下之事ヲ安シ、或ハ御国之事ハ如何ンナツタカト思イ候節、貴兄之顔乎目前ニ看ユル様ニ御座候、何卒愚鈍之心胆御推察奉願候、
僕も一人の男兄弟もなく、常に心細く思っているくらいでございます。それ故に最近も読書などに飽きた時や、天下の事、あるいは国元の事はどうなったかと思う時などに、貴方の顔が目の前に見えるようでございます。何卒、愚鈍な心胆をご推察願います。

 

僕も此節ハ学問之面目を大イニ変シ申候。是迄看付候学も馬鹿之事タト気乎附キ申候、僕儀此節相考候ニ、僕雖愚鈍為文章家著述ヲ致シ、天下之書生ニ名を知ラレンノ経学ヲ致し、黙言持重空論ヲ以、人をタマシ度イノ、博学ニナリ天下ノ俗物ニ名ヲ知ラレタイノト申ス、カシコカリハモウト仕度無御座候、何卒スコシナリトモ御主人様ノ御為メニ相成候学文仕度ト日夜思慮仕候
僕もこの頃は学問に対する考え方を大いに変えました。これまで身に付けた知識も役に立たない事だと気が付きました。僕は愚鈍といえども文章家になって著述を致すとか、世の中の学生に名を知られる為に経学をするとか、黙言・持重・空論をもって人を騙したいとか、博学になって天下の俗物に名を知られたいと言う賢がりをしたいわけではございません。どうか少しなりとも藩公のためになる学問をしたいと日夜考えております。


然レドモ外ニ格別ノ安事も無御座候、貴兄ナトノ御勧メニ相成候経済トモより外は格別無御座候ラハント相考候、何卒御国之兵制之相立候様ニト勉強仕居候、貴兄何卒御存寄も御座候得ハ、早々被仰越候様奉願候、赤川直次郎之申候加藤有隣へなりとも可越罷と相考居候
けれども他に良い策もございません。貴方がお勧めになった経済より他には特にこれといったことはないと考えています。なんとか国元の兵制を整えられるようにと尽力しております。どうか貴方もご意見がございましたらば、早々に仰りなさるようお願い申し上げます。赤川直次郎が言っていた加藤有隣氏の所へでも行ってみようかと考えております。

 

◯杉蔵入獄可憐可恥、弟亦英傑可恐可愛、弟入京議論、誰かアズカリ候者御座候哉、気遣申候
杉蔵の入獄、不名誉に心が痛みます。和作の英傑さは長所であり短所です。和作入京の議論、誰か知っている者はいませんか?心配です。

 

◯清水浪人先生来萩之由、何早くトコカ在向へ引籠る宜舗カラント奉愚察候

清水浪人先生が萩に来るとの事、早くどこかへ身を隠した方が宜しいかと思います。


◯栄太郎如何、富永之噂の一ツも無御座か、是亦如何

栄太郎君や、富永先生の噂のひとつもございませんか?いかがですか?

 

◯松下塾ハ如何か相成候哉承度候
松下村塾はどうなっているか様子をお聞きしたいです。

 

◯貴兄は松下に御出か承度候
貴方は松下村塾に出ているかお聞きしたいです。

 

◯萩表事実丸ニ承度候
萩の状況をそのままお聞きしたいです。


◯桂ナト如何
桂さんはいかがですか?

 

◯中谷も此度之一件ハ骨ヲ折リ候、一番槍ト相考候、起居如何
中谷さんもこの度の一件は苦労しながら尽力致しました。一番槍の手柄だと考えます。(彼の)様子はいかがですか。

 

◯中村道太・赤川直・松島ナト御交リ被成候否承度候
村道太郎・赤川直次郎・松島剛蔵などとお付き合いされていないかお聞きしたいです。

 

◯半井如何
半井君はいかがですか?

 

◯此節何ヲ御勉強カ承度候
この頃は何をお勉強しているかお聞きしたい。


◯前田氏ハ少々有志之士由、可喜
前田(孫右衛門)さんは少々(我々と同じ)志を持っているらしく、嬉しいです。

 

◯御遊歴ハ如何
ご遊歴はどうですか?

 

◯爰元形勢先ツヲカシナモノニ御座候、京師へも七関ヲ建ツル、可悪
この辺りの様子は先ずもっておかしなものになっております。京へも七つ関門を建てるということで、とんでもない。

 

◯松下先生獄ニて如何之状態カクハ敷承度御座候、日夜思出涙仕候
松陰先生は獄内でどのような状態か詳しくお聞ききしたいです。心配で昼も夜も憂いています。

 

◯天下議論如何ト思召承度候
天下の議論をどう思っているかお聞きしたいです。

 

◯陳、朋友タイカイ罪ヲ蒙ランもの無御座乎、僕独不罪ハ僕カ姦物乎、馬鹿乎、御観定被下候様必奉願候、余ハ後便申述候 拝

四月朔日 晋作春風

申し述べる(弁解する)に、友人の中で罪を被っていない者は無いのでしょうか?僕だけが不罪でいるのは僕が腹黒いのか、馬鹿なのか、ご評価くださるようお願い申し上げます。残りのことは後の書状で申し述べます。拝

四月一日 晋作春風

 

ニ白、幾重も御病気御用心専一之儀奉存候、杉梅三郎君宜敷御伝声奉願候、口羽徳祐君亦然リ、僕モ此節タイフン気カ盛ニ相成、随分被仰越候得ハ何ニ成リトモ可致候

玄瑞兄 呈足下

追伸、重ね重ね(申し上げますが)ご病気のご用心を第一にしてください。杉梅三郎君に宜しくお伝えくださるようお願い申し上げます。口羽徳祐君も同様です。僕もこの頃は大変活力が盛んになっております。何でも仰っていただければどのような事であっても心を尽くします。

玄瑞兄 呈足下